ピロールQ&A

Q.なぜピロール農法というの?

A.この農法が生命の基本的な単位であるピロールに着目し、その循環を促す農法だからです。

有機農業とピロール農法のちがいは?

A.分解型ではなく合成型でこのようにみてくると、ピロール農法は、いわゆる有機農業とはちがった性格をもっています。有機農業が一般に、従属栄養微生物によって有機物を分解し、その過程で生成される成分や無機化された養分を利用するのに対し、ピロール農法はこうした分解・酸化の方向を極力おさえ、ラン藻という独立栄養微生物によって還元、合成型へ導こうとする農法です。

それによって分解型にはみられない強力なキレート作用が働き、高カルシウム、高ミネラル作物が生産されるのです。 当然、そこには有機農業にはみられない手だてが必要であり、それがピロール資材の施用です。

農薬を分解するピロール土壌って本当なの?

A.農薬が検出されないピロール農産物

ピロール農法の特徴の一つは生産物中に残留農薬が全く検出されないことです。ピロール農法でも一般より少なくなるものの農薬は使用しますが、数多くのピロール農産物の検査結果からは農薬は全く検出されていません。

これは土壌中の特殊な微生物が農薬を分解してしまうからだと考えています。

土にいる大半の菌は農薬を分解する力があり、土壌菌が多く繁殖する土で育った作物は汚染が少ないことになりますが、ピロール農法では、それだけでなくラン藻以外の農薬分解能力のある、ある種の弱アルカリ性を好む独立栄養微生物が増殖してくるようなのです。
塩素系農薬などから生成されるトリハロメタン類に対し分解能力のある菌がピロール施用土壌から検出されています。

発ガン性が疑われるトリハロメタン類を分解・無毒化

大変興味深いことに、このトリハロメタン類を分解する菌が、ピロール資材を施用し、ラン藻により赤色になった土壌より見出されました。
これはピロール会の岡田進氏、黒田与作氏らの精力的な研究によるものです。

ピロール資材って何?

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素材の配合割合と製品の成分

ピロール資材のおよそのつくり方は次の通りです。

人 糞尿や家畜糞尿を主原料として、これにphを高めるカルシウム資材として生石灰を約20%以上使用します。生石灰は消石灰や炭カルに比べてアルカリ分が 80~95%と多いうえに、水分があると反応して熱を出し、殺菌効果が得られるのも利点であります。それにマグネシウムとして苦土石灰、さらに量はわずか だが、以下のものを加えてミネラルのバランスをとります。

鉄分として血漿(血の固まり)、マンガンとしてマンガン鉱石、アルミニウムとして ボーキサイト、コバルトとして海水または海底泥(海底が隆起したところの岩石)、リン酸カルシウムとして骨粉、ホウ素として動物の毛の粉末、カリウムとし て植物の灰、リンとしてリン鉱石、銅として穀物胚芽(フスマなどを含む)、亜鉛として尿を使用します。この時カルシウムとマグネシウムの比率を3対1にす ることが必要です。

この混合物を熱殺菌し、圧力処畿理して脱脂し、水分を30%内外に調整します。

これで完成です。発酵させるようなことはしないが、これらの素材割合や、圧力をかけて各材料を化学的に反応させる方法に独自のノウハウがあります。

これらの材料をスコップで混ぜあわすだけでは、ピロール資材のような効果はでありません。

こ うして出来上がったピロール資材の物性および成分組成はphは11と高く、三要素はほぼ鶏フン並みです。phが高いので酸化しにくく、袋に入れておけば長 期保存が可能です。さらにミネラルがバランスよく含まれています。そして海底泥はミネラルのバランスをとるのに役だちます。

海洋沈殿物とは?

A.微量元素はその量のバランスが大切で、そのバランスがくずれるとラン藻の発育や作物の生育に悪影響が出ます。
その意味では理想の元素配合をもった土は海洋沈殿物でしょう。
なにしろ、生命の起源は海であり、そこから幾多の生命体が育まれてきました。
したがって、この海洋沈殿物の元素のバランスが植物をはじめ微生物にとっては最も適したものと思われますが、そのバランスにはまだ未知の部分があり、これを人工的に配合するのははなはだ困難です。

土壌によって変わるってどうゆうこと?

A.以上がピロール資材の基本的な構成ですが、土壌によって資材の内容を変えています。

土壌によってミネラル等の組成がちがい、ミネラル環境を整えるために供給するピロール資材の内容がちがってくるからです。

ピロール農法では、これを実際にラン藻を発生させるテストを行なって確かめています。

ピロール農法をしたいという農家に対し、まずその田畑の土を送ってもらい(鑑定料別途)、これにいくつかの成分の異なる各種のピロール資材と水を混ぜてビンの中で培養テストをします。その中で赤色のラン藻が早く増殖してくるのが、その土にあったピロール資材ということになります。

こうして数年前までは成分の異なるピロール資材を用意していましたが、テストを何十回、何百回とくり返していく中で、ピロール資材も改良されて多くの土壌に通用する中身となり、現在では大きく四つのタイプに分かれています。

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基本的な資材はすべての素材が入ったもので主に水田むきであり、これがピロール資材全体の6~7割を占めています。ほかに福井県や石川、富山県に多いマンガン過剰水田にむけたマンガンをぬいた資材、主に果樹園むきの血漿(鉄)をぬいたもの、さらに茶園ややせた畑むきの窒素とリン酸を多くしたものがあります。ミネラル環境を整えるという意味では、土壌ごとに資材の中身を変えるのが理想ではありますが、資材の製造上、そうはいかないのが実情です。

ピロール農法が効かない?

A.ピロール資材に改良を加えてきていますが、それでもテストしてみると、なかなか赤色のラン藻が発生してこない土壌があります。
その典型は、クロルピクリンなどによる土壌消毒を長年くり返してきたミネラル環境(ミネラルバランス)が悪化した露地畑の土壌です。

こうした土壌の改良には時間がかかります。土着の微生物が極めて貧困になっているからでしょう。

いい畑ってどんな畑?

A.ミネラルのバランスがよく土着の微生物が豊かな土ほど、テストをすると早く赤色のラン藻が発生してきます。
おそらく、30年以上前のよく手入れされた田畑の土壌なら、ラン藻の発生が早いにちがいありません。
昔の田畑は人糞尿を入れても2~3日で臭いが気にならなくなりましたが、現代の田畑では2~3週間してもまだ臭うことが多いです。それだけ土着の微生物が貧困になっているのでしょう。

昔の畑なら糞尿(ピルビリンが多い)に石灰という組み合わせでラン藻の発生を促すことができましたが、現代では、それだけでこの間におきた土壌の悪化を改善することはむずかしいです。そこで、人為的にミネラル環境を整え、ラン藻増殖のメカニズムを再現しようというのがピロール農法です。ピロール農法を続けていくとだんだん土壌が昔のような姿にもどり、テストしてみるとラン藻の発生も早いです。

ピロール資材の使用法を教えて!

ピロール資材を生かす2つのポイント

ピロール農法といっても、その実際は大変単純で、ピロール資材をイネでは生育中に2回、各60キロを追肥として散布すればよく、畑では元肥として200キロを土壌混和するだけです。

酸性が強い畑ではやや多めにし、また粘質な土壌の畑では丁寧に混和することを心がけましょう。

土つくりや施肥についてもそれぞれのやり方で工夫すればよく、これといった決まりはありません。ただし、ラン藻がよく繁殖する条件づくりとして、以下の二点は大切です。

①有機物施用と重ならないように

有機物施用については極力、未熟のものを施用しないことです。
未熟有機物はカビなど分解型微生物のエサとなり、土壌を分解型の方向にむかわせることになります。
ピロール農法の基本は、あくまで土壌を還元型、合成型にむかわせることです。
といっても、土壌微生物への影響が少ない完熟した堆肥をつくることは至難であり、そこで有機物施用はピロール資材施用時期と重ならないように、たとえば水田では秋のうちに施用しておくことです。

基本的にいえば、ピロール資材を使えば、他に有機物を施用する必要がないのではないかと考えています。

油カスなどの有機質肥料も分解型に導くので、同様です。いわゆる有機農業とは明らかに一線を画す、新しい着想の農法なのです。
わが家の近くに家庭菜園でピロール資材を使っている市民の方がいますが、その人はピロール資材以外はいっさい使っていません。
それでいて味や内容成分はピロール農法の理想に近いです。
ピロール資材には鶏フン並みに窒素分も含まれており、それ以外によけいなものを入れないほうが良いでしょう。
ピロール農法はあくまで農産物の”質”を追求する農法であり、とりたてて増収はねらいません。結果的に増収しているケースが多いが、基本は高アルカリ、高カルシウムの作物をつくることにあります。

もし、さらに増収を求めるという場合は化学肥料の増肥が無難であります。

この場合、窒素だけの増肥は窒素過多の生育を招くおそれがあるので、ピロール資材とあわせた、同時期の施用が望ましいです。すなわちイネでは穂肥、畑では元肥の化学肥料を増肥します。
なお、ピロール資材はphが11と高いにもかかわらず、先の基準量以上に施しても害が出たという話は聞いていません。
ラン藻など独立栄養微生物によって成分がキレート化され、土壌の他の成分との直接的な反応が起きにくいからでしょう。

②水分を充分に

もう一つのポイントは水分である。

ラン藻の増殖には充分な水分が必要であり、水田では必ず湛水状態で施し、その後も湛水条件を継続するようにします。

ピロール農法では中干しは行ないません。

畑でも充分な水分が必要で、壌土のような水持ちのよい畑で効果が出やすいです。砂地など乾燥しやすい畑では、灌水設備が必要です。

トマトなど、水をやると樹ボケしやすいものでも、ピロール資材を利用すればそうしたことは起こりません。

もちろん、ラン藻が土壌に酸素を供給するので過湿の害は出にくいです。

平成五年の長雨の年でも、ピロール農法の作物は強かったです。