好アルカリ性微生物への着目
ピロール資材はphが11と大変高いです。
ここが大変重要な点です。
ピロール資材の施用量は通常10アール当たり、水田で60キロ、畑で200キロであります。
この量を施すと田でも畑でも施用直後に土壌の田が8.5~9.0ぐらいまで上がり、一週間ぐらいで7.5ぐらいになり、その後ゆっくり下がって1カ月後には7.0ぐらいになります。
この過程で弱アルカリを好むラン藻が増殖してきます。
このph上昇はピロール資材の基本資材の一つである生石灰による影響が大きいです。
この生石灰は、昔はよく使われたが、土壌に直接施すと反応性が強いためphが上昇し、それに伴って微量要素が効きにくくなり、さらに多量に連用すると土壌中にコンクリートのような固い層をつくるために、土壌改良剤として使われることが少なくなっていきました。
当初はよい成果が得られるが長続きせず、生石灰の効果を引き出すには有機物との併用が重要だと強調されてきました。
これに対し、ピロール資材は、有機質やミネラルと組み合わせることで生石灰のもつ欠点を補ない、次のようにph上昇をプラスとして生かす資材ということができます。
土壌中の大半の微生物は酸性側を好む従属栄養型の微生物であり、phを高めることによって、こうした酸性を好むカビなどの分解菌を抑制することができます。
土壌が酸化、分解型にむかうのを抑えるのがピロール農法の特徴であり、それをこの高ph処理によって実現します。
当初の高phが下がってくるのは、この間にラン藻などが増殖してキレート物質がつくられ、それとカルシウムなどが結びついて中性にむかうからです。
したがってピロール資材の施用量は一度は土壌出が約7.5以上になるということから逆算して決められています。
分解菌が抑えられ、これに充分な水分と光、ミネラルがあれば弱アルカリを好むラン藻が増殖してきます。
水田では水を張っての施用が基本であり、畑でも充分な水分を保つことが重要になります。
ところで最近、好アルカリ性の微生物がいくつかみつかり、その特異な働きが注目されつつあります。
phが約7.2である海の微生物への注目もその一つでしょう。
地上の土の中の微生物は不安定で数カ月もすると同じものは見つからないことが多いが、海底の泥に住む微生物は安定で多岐多種にわたっています。
近年はその中から多くの有用な微生物が分離され、それがつくる物質が制ガン剤、抗菌剤、免疫剤などとして使われはじめています。マリンバイオテクノロジーといわれる分野です。
ラン藻が大活躍したかつての地球は還元的でアルカリ性の世界だったのでしょう。その時に活躍し、地球を浄化してくれた古代の原核微生物には汚染が進む現代において貴重な働きをしてくれるものが少なくないと思われています。ピロール農法の土壌にもそうした特異な働きをもつ微生物がいることが考えられています。その一つが強い農薬分解能力をもつ好アルカリ性の微生物です。
「ピロール農法」より引用